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2021年03月01日

【Weekly No.274】米国債利回りと株式配当利回りが一時逆転

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  1. 米国債利回りと株式配当利回りが一時逆転
  2. 米長期金利の上昇、東京にショック波及
  3. この半年月末安が続く東京市場

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Weekly31

【米国債利回りと株式配当利回りが一時逆転】

米債券相場が急落した。10年物国債利回りは25日一時1.614%、その後1.55%前後の揉み合い。この日の引けは10年債が1.52%(前日1.37%)、30年債は2.27%(前日は2.23%)。1.48%程度のS&P500指数配当利回りと逆転したため、株価調整が大きくなった(NYダウは559ドル安)。特段の材料は出ていないが、毎週木曜発表の週間新規失業保険申請件数は20日現在、73万件、前週84.1万件、市場予想83.8万件を大きく下回りインフレ懸念も言われた。失業保険申請数の減少は表面的には「コロナ感染減少を反映」とされたが、不正申請横行と伝えられたオハイオ州などが大幅減で、テキサス州中心に大寒波の影響も不透明で、判断材料としてはイマイチ。今週末の2月雇用統計まで、波乱含みと見て置きたい。

この日地区連銀総裁から金利上昇を容認する発言が相次いだ。アトランタ連銀総裁は「米国債利回りはなお低水準、FRBの対応不要」、セントルイス連銀総裁は「米債利回り上昇は妥当。支援解除の議論は時期尚早」など。当局側も手探り感が漂う。CTA(商品投資顧問業者)などの売り方は、アルゴリズム取引などで機械的に売り攻勢を掛けているようで、足の速い展開となっている。米国債の大規模な売りはある段階に達すると、特定の投資家グループに一段の売りを促し、動きが増幅されることがある。売りを余儀なくされたグループとは、7兆ドル(約743兆円)規模の住宅ローン担保証券(MBS)市場の投資家だ。米国債利回りとそれに連動する住宅ローン金利が突然に大きく上昇すると、住宅ローンの借り手は借り換えの動機が薄れる。借り換えが減るということはMBSが早期償還されず、投資家にとっては資金の回収に時間がかかることを意味する。この回収期間(デュレーション)が長いほど、金利上昇による痛みは強まる。住宅ローン担保証券(MBS)保有者のヘッジ売り(コンベクシティヘッジと呼ばれる。金利上昇はローン借り換えを停止させ、回収期間長期化で保有リスクを一気に高める)を睨むことになる。  

利回り上昇加速要因で、7兆ドルの規模をもつ市場は、かつて1994年、2003年にもコンベクシティヘッジによる金利上昇が発生している。ただ、現在のMBS保有は約1/3FRB、約1/3が米銀で、ともにヘッジには動かないとの見方もあり、CTAの一人相撲に終わる可能性もある。

株式市場の下落には、景気回復期待が上手く推移しない時のリスクを織り込む動きもある。その代表銘柄はテスラ株。カリフォルニア州の「モデル3」工場一時休止と25日に伝えられた(3/7まで)。テキサス大寒波で韓国サムスン電子のテキサス州工場が停止しており、その制約と見られている。テスラ株は一時9.6%安。ハイテク株や投機株下落のリード役となった。バイデン政権は車載半導体不足への対応を連日協議しているようだが、新たに台湾で水不足(昨年台風上陸なく渇水が続いている)による生産調整リスクが伝えられる。 

変動の大きい指数だが、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は255.80%安と、ナスダック3.52%安を上回った。半導体供給難は設備投資期待との綱引きに移行すると見られている。景気回復は「K字型」が続くと見られるが、各々の業界の個別材料を吟味しながらの展開に向かうと考えられる。

 

【米長期金利の上昇、東京にショック波及】

米長期金利の上昇をきっかけに米国だけでなく、世界の株価も急落している。市場の一部では株高基調の「変調」観測が浮上しているが、米欧日中銀の超金融緩和政策がしばらく続く中で、米長期金利の上昇が株価の「自動調整機能」を果たし、株高地合いは継続されると考えている。しかし、日銀が3月の金融政策決定会合で公表する「点検」に対しては、米金利高の影響が何らかの形で波及する可能性もありそうだ。

25日のNY市場では、前述したようにインフレへの警戒感などから10年債金利は1.614%まで上昇。S&P500株価指数の平均配当利回りを上回り、株式市場の魅力が低下したとの受け止め方が広がった。25日のNY市場の急落を受けて26日の東京市場でも、日経平均が、前日比1202円の下げを記録。東京市場では、主要中銀の超金融緩和策による流動性供給を背景にした株高基調が、転換点を迎えたのではないかとの見方も出ている。

しかし、その見方は早合点の可能性がある。これも前述したように、米FRB(連邦準備理事会)の幹部からは、長期金利の上昇をけん制する発言が出ていないからだ。米長期金利の上昇によって、市場がFRBによる米国債購入の減額(テーパリング)が早まると警戒し、今回のように株価下落につながれば、それは適度な相場調整の出現とも言え、超金融緩和の副作用である「過熱感」を抑制する「自動調節機能」と解釈できるのではないか。

実際、VIX指数(ボラティリティ指数)は、問題の2526日ともに20台後半で推移し、東京市場は26日に28.30(前日23.74)、米国は27.95(前日28.89)と市場の大幅な緊張を示す水準である70台からはかなり距離がある。

また、パウエルFRB議長は23日の米上院銀行委での証言で「完全雇用が実現し、インフレ率が2%に上昇し、当面2%を若干上回る水準で推移する軌道に乗るまで、金利をゼロ近辺に維持する」「完全な回復までまだ長い道のりがある」と表明。現行の超金融緩和策が長期化する見通しをあらためて強調した。

FRBから見れば、住宅価格の急上昇など典型的な資産価格のバブル的現象は何としても抑え込みたいが、雇用の改善までは忍耐強く緩和を継続する必要がある。今回のような長期金利の上昇は、資産バブルを抑え込む働きだけでなく、市場が「テーパリング」(金融緩和の終了)の思惑を自ら醸成することで、結果として息の長い株高を生み出す効果を持つと考える。

 

【この半年月末安が続く東京市場】

ただ、東京市場では、米長期金利の上昇による反射的な効果が、やや過大に受け取られた可能性もある。国内の10年債国債利回りが、日銀のマイナス金利政策の導入後で最も高い水準まで上昇したのが、典型的な動きだろう。金利上昇に過敏な市場心理が色濃い中で、それをさらに刺激するのは得策ではないと日銀が考えても不思議ではない。

今回の米長期金利上昇を発端にした日米株の下落は、金融相場の「弱点」をさらけ出したように見えるが、日米欧中銀の緩和政策が長期化するという経験のない状況下では、以前に見たことがないようなメカニズムが働き、株高は想定を超えて継続する可能性があると考えている。また、日経平均に限れば、昨年7月以降(8月だけを除いて)、月の最終日が大幅安になっている。7月が629円安(8月は257円高)、9月は353円安、10月は354円安、11月は211円安、12月は123円安、そして先月は534円安(前日も437円安)、2月はとうとう1202円安だった。かつて月末最終日はドレッシングの買いで株高になることが多かったが、今は株安なっている。この辺りのことは27日付け日経新聞証券欄のコラム「スクランブル」説明されている。このコラムでは月初高も説明されているが、果たして3月はどうなるのだろうか。

筆者はこの月末安は、コロナ禍での超金融緩和により、株式が需給だけで動いていたからと理解している。例えば、215日の日経平均3万円乗せにの時には、その前後も同じ材料で株価は上がって行った。米市場でのバイデン政権による1.9兆ドルに及ぶ追加経済対策、それにコロナ感染者減少による経済回復期待の2つだけだった。数日間使い古された2つの材料で、あっという間に3万円に乗せたのをみても、日米両市場ともに金余りによる株式需給だけで動き、敢えて言うならコロナ後の経済回復を期待し株価が先行したのだろう。その結果ファンダメンタルズ(実体経済)が株価に対し遅れているだけに投資家は常に株価上昇の継続性に戦々恐々としていたのではないだろうか。日経平均1202円安で流れが変わったわけでなく、遅れた買い方にチャンスが来たと考える。

 

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