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2021年03月08日

【Weekly No.275】米金利上昇で不安定な株価

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  1. 米金利上昇で不安定な株価
  2. なぜ債券市場の心理はインフレ警戒へと転じたのか
  3. アフターコロナの経済状況、金融緩和は続く
  4. 米株価はバブルだった?株価を支える4つの条件

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Weekly 38

 【米金利上昇で不安定な株価】

先週、週明けは日米ともに株価は大幅高、先々週末の金利急騰でその後の株価は大幅安。日経平均は29000円割れ。米国市場ではナスダックが1300ポイント割れと株価が不安定になっている。これは米国の長期金利上昇が懸念され、日本でも3万円の大台にのせた日経平均株価が226日に3万円を割り込んだ後、34日には29000円も下回った。

米国の10年物国債金利は225日に1.6%に一瞬達する急騰をみせた後、翌日には1.4%前後に低下するなど、高い変動率を伴いながら約1カ月で約0.4%も上昇した。そして、妥当な金利水準が不明になり投資を手控える動きが強まったことも、債券のパニック的な売り(大幅な金利上昇)を招いた。

何故、新たな材料がないにも関わらず、突然金利が急上昇したのだろうか。今年になってからも米国の経済動向そして金融財政政策など、本来長期金利に影響する重要かつ新たな材料はほとんどない。実際には、大掛かりな財政出動で米国経済正常化が実現するとの思惑は、昨年の大統領選挙後から、金融市場の中ではくすぶっていた。そして、2月の中旬、バイデン政権が打ち出した財政政策がインフレをもたらすリスクを指摘するハーバード大学のローのレンス・サマーズ教授の発言などが報じられ、この発言をキッカケに一気に経済状況を改めて認識した債券投資家の心理が揺らいだとみられる。

 では米債券市場が懸念している米インフレの芽とはどういう芽があるだろうか。主なものはやはり4つある。1つ目は、コモディティ価格(商品先物)が上がっていること。2つ目はバイデン政権の財政拡張。1.9兆ドルもの巨額支出を決め、11500ドルの給付金という前回の2倍のばらまきを実施する。3つ目は金融拡張がしばらく続くこと。4つ目はペントアップ需要(特定の理由により控えていた消費者の需要が、一気に回復すること)が膨らむこと。

 

【なぜ債券市場の心理はインフレ警戒へと転じたのか】

また、2月中旬までの緩やかな長期金利上昇は、インフレ期待の上昇が主たる要因だった。ただ2月最終週に見られた大幅な金利上昇は、FRBの継続的な利上げが2023年に始まるとの予想を織り込みながら、債券市場の心理がインフレ期待からインフレ警戒方向へと真逆に転じたからだろう。

年初までみられた「金融緩和が徹底されるので、米国の長期金利は日本同様に上がらない」から、「コロナ後にはインフレが加速するのでFRBが早々に利上げに踏み出さざるをえなくなるとの見方」へと、真逆の方向に転じたのだ。

コロナ克服後、つまりアフターコロナの経済状況、2021年の米国経済は5%近い高成長に加速すると予想されているが、一方で、インフレ率が持続的に上昇する可能性は低いと見ている。なぜインフレリスクは大きくないのか。2021年に経済成長率が加速するとしても、基調的なインフレ率を左右する労働市場の回復が遅れる可能性が高いと考えているからである。先週、2月の雇用統計が発表された。予想を大きく上回る就業者数の増加であったが、失業率は1月の6.3%から6.2%に改善した程度だ。ただ、専門家によると、半年以上の失業者が400万人と非常に多く、また失業中でも休職中と回答した人も含めると失業率は実際には6.7%程度、景気後退前の水準に戻るのは、この先7年後という意見もある。とはいえ、この日は雇用統計を好感してNY ダウは572ドル高に回復した。

 

【アフターコロナの経済状況、金融緩和は続く】

新型コロナによって産業構造が大きく変わるとみられるが、アフターコロナの時代にはこれに伴い雇用形態のシフトも同時に起こるだろう。つまり、労働市場が、FRBが目指す完全雇用に達するには、かなりの時間を要するのではないか。このため、大規模な財政政策の発動によって、いわゆる需給ギャップは縮小しても、それがインフレ率の上昇に直結しないと予想している。

アフターコロナで米国の潜在成長率が下がるのはほぼ間違いない。なぜなら、DX化(デジタルトランスフォーメーション)が進められると、ますますデフレ圧力が働く。例えば、コロナ禍の中での在宅勤務では経費削減効果が明らかになったので、アフターコロナでも在宅勤務は定着するだろう。DX化や環境重視の流れは既存の産業には逆風となる。

だから、景気が回復しても雇用はなかなか回復しないし、いわゆるインフレ、つまりCPI(消費者物価指数)の前年比が継続的に上昇していくということも考えにくい。そうした状況ではFRBの金融緩和政策も続く。このところ原油価格が上昇しており、CPI(消費者物価指数)を押し上げインフレの芽となるのではという疑問も生じる。しかし、2020年に原油価格は大きく下がっており発射台が低いので、テクニカルな反動で前年比プラス2.4%とか2.5%の物価上昇率は持続しないと思われる。そのことはすでにマーケットも織り込んでいる。インフレ率の上昇は1年ぐらいしか続かないだろう。

 

【米株価はバブルだった?株価を支える4つの条件】

では、米株価はバブルだ。今回の長期金利上昇による株価下落は「バブル崩壊」の証だ、という意見もある。個人的には米株価をバブルとは見ていない。バブルだと主張する人がよく引き合いに出すのはいわゆるバフェット指数で、株価の時価総額の合計がアメリカの名目GDP(国内総生産)の何倍買われているか、というものだ。現在は130%と過去の例から言えば「バブル」になる。しかし、長く低インフレが続いたので、過去と今とでは金融政策や貨幣の価値が違っている。

また、米国の主要銘柄も昔とは異なる。今の株価を牽引している銘柄は、世界中から富を集めてくるプラットフォームのビジネスだ。米国1国のGDP対比の時価総額が過去よりも現在のほうが高いのでバブルだという主張には、無理がある。

ただ、今の米国の株価がいくつかの条件の下で正当化されているのは事実だ。その条件が崩れたら株価は下がると予想している。その株価を支える条件とは、第1に金融緩和の継続、第2に財政拡張政策の継続、第3に低いインフレ率、第4に新型コロナは1年以内に収束するということ。この4つはいずれもまだ崩れていない。ただ足元では3番目のインフレが気になる、という程度だ。

米国では新型コロナの被害が大きかったので、ワクチンが普及してアフターコロナとなったら、人々が解放されてものすごく浮かれた経済になるのはまず間違いない。2021年半ばから成長率、インフレ率は高まる。しかし、これだけ多くのインフレ要因があっても、かなり強い経済と高インフレ率が長く続くのかといえば、そうはならないと思う。前述したようにアフターコロナで潜在成長率が下がるのはほぼ間違いないからだ。

インフレが起こりにくい状況ではFRBの金融緩和政策も続く。前述した米株価を押し上げている条件は今のところ、どれもまだ崩れていないため、米株価はまもなく回復すると思いたい。

また、BofA(バンクオブアメリカ)が「株式から債券への資金シフトを招く転換点は米10年債利回り1.75%」との見解を示したことが、長期金利が1.62%を抜けていかない要因になった可能性がある。トランプ政権前からキーワードだった「債券から株式へ」が金利急上昇で壊れる懸念があったが、糊代はまだあるとの見立てになる。「1.75%」の根拠はハッキリしないが、株式配当利回りを上回る1.5%以上で一時的に動いても、株式市場が直ぐに瓦解しないとの目線につながろう。

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