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2021年05月17日

【Weekly No.285】世界同時株安、週初からインフレ懸念が台頭

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  1. 世界同時株安、週初からインフレ懸念が台頭
  2. 週後半には、米長期金利は安定しインフレ懸念が後退
  3. ハイテク株崩壊の加速はインフレ懸念誇張か

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Weekly 517

【世界同時株安、週初からインフレ懸念が台頭】

先週は世界の株式市場にとって大荒れの週だった。前週末発表の下振れ米雇用統計からワンテンポずれて、週明けから世界の株価は調整場面となった。10日のナスダック2.55%安に対し、11日は台湾加権指数-3.79%、スウェーデンomxs30-3.15%、日経平均-3.08%、-2%台で英FTSE100-2.47,日本TOPIX-2.37%、蘭AEX-2.24%、デンマーク-2.19%、香港ハンセン指数-2.035%。これを受けた11日の米株はダウが-1.36%、ナスダックは一時の2%超安から-0.09%に下落幅を縮めた。

この日の米10年物国債利回りはまだ1.62%台、ドルは2か月半ぶり安値近辺揉み合い。株式相場の調整要因は「インフレ懸念」が大勢だが、アルケゴス問題など当初未知の材料が潜んでいるかどうかは不明。

ヘッジファンドの動きで「ハイテク強気派がナスダック市場退出」と伝えられ、ポジション調整が起こっているのか、あるいは「ジャンク債をヘッジファンドが大幅ショート」とされ、思惑的な不安心理拡大を狙ったものか、分からないが、短期筋の売りを巻き込んだと思われ、東証空売り比率は39%台から11日に47.3%に一気に撥ね上がった。今の相場は売り残が買い戻しに転換した時に最も力強い上昇場面になる。その繰り返しか、14日の日経平均は636円高、当然空売り比率は大きく減少すると思ったが、44.2%と大した減少ではなかった。つまり日本株の買戻し余力はまだ相当残っているようだ。

大幅調整のスタートだった11日のNYダウは473ドル安で 米VIX(恐怖)指数は21.8411%ほど跳ね上がった。翌12日に27.59まで上昇し、今度は14日のNYダウ360ドル高で重要な20レベルを下回り18.76まで下げ、株価の安定感が見えてきた。

調整のキッカケとなった先々週末の雇用統計下振れの原因を巡って論争が起こっているが、労働需給は次第に逼迫、一時的なミスマッチがインフレ要因に働くとの見方が大勢。今回のインフレ観の強まりは商品市況の高騰が主因と考えられ、久々に商品ファンドが復活し資金が流れ込んでいると思われる。   

当然、インフレ観を煽る。商品指標の一つ、バルチック海運指数は55日、3266ポイントが今のところ天井。11日は3240.0,前日比+1.79%(13日は3139.0)。また、CRB商品指数は11207.55,前日比+0.68%と高値更新基調が続いている。今後も原油、非鉄、穀物相場の動向を中心に見て行くことになろう。金融市場の注目点はインフレ、金利動向に軸足が移っていることを示す。

当初、今回の調整にはひょっとして、コロナ再拡大、ワクチン失望があるのかと思ってニュースを探したが、「集団免疫に最も近かった国に異変、感染がこの一週間で倍増」というのがあった。インド洋の小島国セーシェルのことで、「現在感染治療中の患者は2486人、1週間前は1068人。感染者の37%は2回目のワクチン接種終了」と発表。分析は未だだが、南ア変異株ではないかと見られている。ワクチンは57%が中国・シノファーム製。残りがアストラゼネカのインド生産品。今のところ大勢には影響ないと思われるが・・・。

【週後半には、米長期金利は安定しインフレ懸念が後退】

急激なインフレ懸念傾斜が一服、13日の米主要3指数は揃って反発した。インフレ懸念に賭けた売り崩しと言えなくもないので、資金の足は速い。一つの背景はこの日債券相場が追随しなかったこと。米10年債利回りは12日に1.70%台を覗いたが、この日は1.65%台に低下、一気に2%に向かう勢いは見られない。12日に10年債に続き13日には30年債の国債入札を終え当面の懸念要因が終了した。

この日発表の4PPI(卸売物価指数)は前年同月比+6.2%(前月+4.2%)と高進したが、CPI(消費者物価指数)と異なり、前年の4月が異常状態にあったとの見方が出ている。CRB商品指数は2.41%安、バルチック海運指数は3.53%安、中東情勢で原油相場は不透明感が強いが商品市況全般に一服感が出た。

インフレ懸念は景気回復の裏返しでもあるが、インフレ高進が景気回復を失速させるとの見方も交錯する。この日発表の週間新規失業保険申請件数は47.3万件、前週の50.7万件から順調に低下。景気回復基調への安心感から、株式押し目買い要因になったと思われる。  

FRBやイエレン財務長官等は「インフレの強まりは経済再開に伴うもので、一時的」との見方を繰り返している。11日には米GS(ゴールドマンサックス)も「インフレ上昇は一時的現象、ピークはもうすぐ」との見通しを発表した。アトランタ連銀のボスティック総裁は「市場に過度の(フロス)は見当たらない」と述べたが、「多くのノイズがあり、少なくとも9月一杯まではボラティリティ(相場の変動)の高まりが見込まれる」との見解。

商品市況には中国要因も大きな材料。非鉄や穀物市況などは中国の爆買い要因もあったと思われる。しかし、12日、中国の4月新規銀行融資が予想以上に低下し、マネーサプライ伸び率が21か月ぶりの低水準となったことが、中国の景気スローダウン観につながった可能性が考えられる。4月新規人民元建て融資は14700億元(2282億ドル)、3月の27300億元、市場予想の16000億元を下回った。前年4月中国では「コロナ終息宣言」を受けて、大規模刺激措置を開始した時期で、17000億元だった。局地的バブルを嫌い、中国当局は当面引き締め気味に運営すると見られている。なお、中国の4PPI(卸売物価指数)は前年比+6.8%、3年半ぶりの高い伸び。CPI(消費者物価指数)は同+0.9%と予想外に低い伸び(通年目標約3%)にとどまった。豚肉価格下落による食品価格の0.7%下落もあるが、消費伸び悩みによるスタグフレーション懸念がある。4月のスマホ出荷は前年比33.9%減、前年4月に急増していた面もあるが、3月や194月も大きく下回った。

日本株の割負け感が目立ってきた。NYダウ終値と日経平均の絶対値差は13日には6573ポイントまで拡大。下落のピークだった13日の各国のVIX恐怖指数を比べると、日本28.31、欧州23.35、米国23.13と日本株は取り残されている。ちなみに、先週の週間騰落率を比べると、日経平均は4.34%の下落、NYダウは1.13%、ナスダックは2.06%とそれぞれ下落している。今回の調整の震源地は米国のインフレ懸念だったが、最も大きな影響を受けたのは日本株だったことになる。逆に、日経平均ベースの予想PERはアッと驚く間に14.39倍に低下、配当利回り1.85%、日本株の割安感が台頭。日本株には感染高水準、政治混乱など明るい話がないが、半導体の動きに追随しやすいため、SOX指数(フィラデルフィア半導体指数)には注意が必要。

 

【ハイテク株崩壊の加速はインフレ懸念誇張か】

日本株が11日から13日にかけて大幅下落したのは、米ハイテク株や米半導体指数(SOX指数)の影響をもろに受ける台湾株の影響が大きい。11日、値下がりトップだった台湾市場が12日は一時9%近く崩落(終値4.11%安、131.5%下落)。ハイテク株安のところにコロナ脅威が襲い、膨らんでいたマージンデット(証拠金債務)を直撃、パニック的な動きになったと見られている。証拠金債務は2週間前に約2740億台湾ドル(約1.1兆円)と年初比46%増、2011年以来の高水準と伝えられていた。台湾市場は個人投資家が約6割を占め、過熱しやすいので立会時間が短いと聞いたことがある。マージン・コール(追証)懸念が一気に膨らんだと見られる。

台湾当局は11日に集会の規制強化を発表した。前日台湾のコロナ感染は15人。「さざ波」以下だが、「警戒水準引き上げ」の衛生福利部長発言で市場の警戒感が一気に高まった。先手あるいは丁寧な説明が裏目に嵌まることがある。少し前の列車事故では、市場は動揺しなかったのだが。「三隣亡」(悪い事は三つ重なる)的不安心理かも知れない。

12日、アジア市場の後、欧州市場はとくに響かなかったが、米時間で予想上回るCPI(消費者物価)発表で米株は再び崩れた。インフレ懸念は「バイデン懸念」の一つだが、FRBなどは「一時的」との見方を繰り返しており、今のところ「インフレ懸念」は誇張されている観が強い。米国市場でのマージンデットは3月末で8220億ドル(約90兆円)、前年同期比72%増と伝えられており、崩れやすい状況にあったと思われる。これに「ヘッジファンド、ハイテク株空売り奏功」と、売り仕掛けの成功が拍車を掛ける。

前述した4月の米CPIは総合で前年比+4.2%(市場予想3.6%)、食品・エネルギーを除いたコア指数は同+3.0%、前月の+1.6%から加速した(予想は+2.3%)。内訳で目立つのは航空券+10.2%、宿泊+8.8%、自動車は+0.5%だが、中古車・トラックの+10%が目立つ。中古車の販売増は半導体不足で新車の生産が遅れていることが原因のようだ。またガソリンー1.4%、食品+0.4%と商品市況関連は落ち着いていた。12日の原油先物相場は8週ぶり高値。北海ブレント69.32ドル、WTI66.08ドル(ともに1バレル当り)。サイバー攻撃で停止したコロニアル・パイプラインは稼働再開に着手と伝えられたが、イスラエル-パレスチナが内戦状況に陥って来た。押し上げ材料が不思議なぐらい続いている。

日米市場ともに売り残が溜まるかどうか分からないが、出来高などを見ながら、買い戻しタイミング、待機勢の出動タイミングを測ることになろう。

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