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2021年07月12日

【Weekly No.293】8日のアジア発世界同時株安の様相、香港壊れる

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  1. 8日のアジア発世界同時株安の様相、香港壊れる
  2. 米金利急低下、部分軌道修正相次ぐ
  3. 習文革の行方、北戴河会議に向け、締め付け強化か

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Weekly 712

【8日のアジア発世界同時株安の様相、香港壊れる】

8日の世界株式市場はアジア市場から崩れ、NYダウ先物が一時600ドル安症状となったが、何とか踏み止まって戻って来た印象だ。後講釈的には、日本が4度目の緊急事態宣言を発出し、五輪「首都圏無観客」に失望したことになろう。ワクチンが全て解決するような行き過ぎた論調が修正され、景気急回復期待のポジションが手仕舞われる流れと見られる。

この日株価指標で最も下落率が大きかったのは香港ハンセン指数の2.888%。つれて、タイ-2.09%、ベトナム-1.47%、マレーシア-1.40%、シンガポール-1.08%と東南アジアが崩れた。東京市場は後場に一段と軟調になり(引けは-0.88%)、インド-0.96%を経て、欧州が軒並み1%以上の下落となった。下落がキツクなったのはイタリア-2.55%、スペイン-2.31%、南ア-2.34%など。香港は年初からの上げを吐き出したことになる。

香港市場が世界市場の崩れの主因の様に思われる。中国への遠慮、配慮でそういった論調にはならないかも知れないが、ハイテク企業への弾圧で自ら市場を壊している。前日は、中国のメディカルデータ事業のリンク・ドット・テクノロジーが米国でのIPO(新規株式公開)を断念。8日に公開価格を決定する予定だった。先々週、中国当局はNY上場したばかりの3社を調査、暴落に追い込んでいた。ロイターの報道によると「中国証券監督管理委員会(CSRC)は中国企業による国外でのIPO計画を審査する組織」を設ける意向。

テクノロジー企業が巨大化し、中国共産党を凌ぐ力を持つことを極力排除する動きと考えられている。アリババから始まった潮流がどんどん広がり、市場を壊し始めた観がある。この日の香港テック指数は3.7%下落、7営業日続落、昨年10月以来の水準。アリババ、テンセント、ビリビリ、美団、百度、京東商城(JDドットコム)などが軒並み3.6-7.3%安。

加えて、東京時間午後、ブルームバーグが「中国恒大、商業手形残高膨らむ債務圧縮図る中で流動性懸念も」と報じた。潜在的な中国の不良債権問題懸念が後押しした可能性がある。

子会社発行の短期借用書(IOU、商業手形)が昨年末時点で約320億ドル。しばしば支払いが滞り、流通市場では利回り36%水準で取引されていると言う。ドル建て債の利回りも約25%。表面上の債務残は減少しているが、火の車状態で、中国では約33兆円規模の負債額が懸念されている。中国の10年債利回りは8日、3%割れ、2.99%となった。表面上は、銀行の預金準備率引き下げで金融策を論じているが、事実上、緩和策に踏み込んでいる可能性がある。

コロナ禍からの急回復期待は、中国経済低迷で水を差される構図にもある。中国情勢を睨みつつ、下値は年初来プラス水準(日経平均昨年12月末27444円)のキープが課題になると考えられる。

 

【米金利急低下、部分軌道修正相次ぐ】

連休明けの米市場では、金利が急低下した。10年物国債利回りは8日一時124%と2月以来の水準。30年債は2%割れの1.98%台。ISM(米供給管理協会)の6月非製造業総合指数が60.12月以来の水準に低下、景気回復期待が萎んだことが背景と伝えられたが、細かい材料が相次ぎ、玉突きのようにポジション調整が起こっている印象だ。

今年に入って債券価格を下押し(利回り上昇)し、株価指数を何度も最高値に押し上げ、長らく動きが鈍かった米割安株を再び活性化させたリフレトレードがここにきて急速に後退している。その原動力になっているのは債券市場だ。指標の10年物米国債利回りは8日、1.3%を割り込み(71日は1.45%)、物価上昇の影響を除いた実質金利はマイナス1%を下回った。成長見通しに対する失望感の広がりを示唆するものだ。

リフレトレードとは、リフレ政策の効果を期待する方向へ投資行動を行うことだ。では、リフレ政策とは何かと言えば、リフレーションになるように金融・財政政策を実施することを指し、日本では、日銀が量的緩和などを通じてマネタリーベースを増やし期待インフレ率を押し上げることで、投資を促しデフレから脱却しようとしていた。ちなみに、リフレーションとはデフレを脱却し、まだインフレにならない程度の状態を指す。

こうしたさまざまな資産の動向を見ると、リフレトレードの最盛期は過ぎ去ったとの見方が市場でますます強まっていることがうかがえる。上期は景気急拡大で割安株が復活したが、その後、「成長のピーク」を巡る懸念が浮上、一時はハイテク株の下落要因となったインフレ期待も落ち着いている。

45月と6月にかけて、経済データのピークが相次いで確認されている。足元では数字はまだ伸びているが、そのペースは減速しており、市場はそれを織り込みつつあるようだ。

前述したように米供給管理協会(ISM)が6日発表した6月の非製造業総合景況指数は市場予想を下回った。外食や宿泊、旅行といったサービスに対する需要の底堅さをなお示唆しているものの、全体として活動拡大ペースの鈍化を示した。8日発表の新規失業保険申請数(73日までの週)は前週比2000件増の373000件、エコノミスト予想中央値は35万件で、労働市場の回復ペース鈍化を示唆している。

米国市場の波乱を受けて、9日の日経平均は一時700円ほど安くなった。ところが終値は177円安まで回復、特に引け値は朝方の始まり値(寄り付き)より高くなっており、チャートの用語でいう陽線となっている。しかもこの日の値動きをろうそく足で見ると、安値が700円で、そこから回復しているので、下ひげの長いろうそく足になっている。これは典型的な底値を表すチャートだ。このため今週は戻り局面となるだろう。とはいえ、この日の西村経済再生相の「飲食店休業に金融機関に働きかける」発言は、超お粗末。菅政権はいつも根拠を(例えば緊急事態制限)示さないが、西村氏も法的根拠を示したわけではない。むしろこれは強権政治であり隣の国と一緒。西村氏はご自分の発言が意味することを分かっているのかしら。今週の日経平均の下げはNYダウとの連動性が薄かったことから、日本の政治家の貧困さに嫌気した売りだろう。しかし、歴史的に日本株は政治家を見て動いてはいない。間もなく始まる増益が期待される46月の決算に注目が集まるだろう。

米金融当局のタカ派的な姿勢や新型コロナウイルスの新たな変異株が世界各地で拡散する状況も相まって、確実に信頼できる銘柄に再び市場の関心が集まっている。米国では経済活動再開で累積需要が解き放たれたが、景気上昇基調への追い風が弱まりつつあるのも事実。結局、米金融当局が次にどう動く可能性があるのかに注目が集まる。

 

【習文革の行方、北戴河会議に向け、締め付け強化か】

前述したように中国のテクノロジー銘柄への締め付けが一段と拡大している。配車サービス最大手の滴滴出行(ディディ)が630日にNY証券取引所に華々しくデビュー(預託証券:ADR)した直後、中国政府のインターネット情報弁公室は「サイバーセキュリティー法」による同社への調査を開始すると発表。4日には「重大な違反行為」を認定したとして、スマホのアプリストアからダウンロードを禁止した。

滴滴の違法行為の詳細は不明だが、「取得データを米国に提供している」との噂が出ている様だ。5日には中国サイバースペース管理局(CAC)が、求人アプリ「BOSS直聘」とトラック配車アプリ「運満満」、「貨車幣」(両社は合併し、「満幣集団」)への調査を表明した。いずれも先月、米市場に上場している。満幣(フル・トラック・アライアンス)はトラック版ウーバーと評され、1000万人強の登録運転手、500万人以上のトラック所有者を抱え、中国国内物流の混乱を招くのではないかと懸念視されている。

中国当局によるハイテク株の監視は香港市場のハイテク銘柄を直撃。香港ハンセン指数は50.62%続落、滴滴に出資するテンセントが4.2%下落(日本でもソフトバンクGが続落)、5月に中国独禁局から是正命令を受けた美団が一時5.9%下落など。香港政府に対し、フェイスブック、グーグル、ツイッターが「データ保護法の改正が計画通り進めば、香港でのサービスを停止する」と警告した(WSJ紙)ことも重なり、IT関連全般の不調観が強まった。

この時期に、テクノロジー関連企業への締め付けを一気に強めて来たのは、71日の党創設100周年イベントを通過し、次のヤマ場と見られる今月末か、8月上旬の「北戴河会議」に向けての暗闘が始まっているためとの見方がある。最近、改革開放派と見られる王岐山副主席の動静が全く伝えられなくなっている。江沢民派や親米派が中心だった「改革開放派」一掃を目論み、習氏が「終身最高権力」の座を固める動きと考えられている。ちなみに、昨年は「軍権掌握」の攻防とされ、人民解放軍が中国共産党の軍であるとの位置付けが強化された。

5日、麻生副総理が台湾有事に言及(集団安全保障)、習主席は独仏首脳とオンライン会談を行った。欧州に米国とは一線を画すよう要求(北京報道)したようだが、欧州側の反応は冷ややか感がある。中国情勢に要注意の夏が続くと思われる。

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