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2021年10月18日

【Weekly No.306】経済安全保障”の流れ表面化

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  1. 経済安全保障の流れ表面化
  2. 米市場中心にインフレ巡る攻防激化
  3. 経済論議はコロナからインフレやサプライチェーン問題に

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Weekly 1018

【経済安全保障の流れ表面化】

岸田+3A(安倍、麻生、甘利)の体制は、先週の当レポートでも書いたように、今年5~6月頃から動き始めていたと見られる。527日に「新国際秩序創造戦略本部」(岸田本部長)が中間とりまとめを発表し、「半導体議連」(甘利会長)等も旗揚げした。ただ、あまりにも岸田氏の人気がなく、高市氏出馬による総裁選攻防・連携を経て、岸田首相誕生に漕ぎ着けたものと考えられる。

その当時から出ていた話が二つ具体化して来た。一つは台湾TSMCによる熊本新工場建設。ソニーなどと組み、8000億円規模の投資を行い、政府が巨額支援(半額程度か)を行う予定。回路線幅22~28ナノのロジック半導体工場で、最先端ではないが、品不足感の強い分野だ。ソニーの画像センサー工場に隣接し、一体化して自動車向け供給がメインになると思われる。九州はトヨタも、日産も、ホンダ工場も立地する。国内半導体投資、業界再編、部資材供給会社などの動きが活発化すると期待される。

もう一つは、衆院愛知11区の古本伸一郎前議員の不出馬表明。トヨタ労組の支持を受け、6回連続当選(前回は希望の党、現無所属)していた。トヨタ労組は「自動車産業550万人の雇用を守るため、性急な脱炭素に批判姿勢」で、自民党との接近ぶりが話題だった。同様の流れは、電力総連にも可能性がある。原発再稼働の姿勢で与党と組む可能性があり、萩生田経産相の手腕が注目されている。

岸田首相の「新しい資本主義」は様々な解釈がされているが、労使の関係、労組の政治的立ち位置を変えることも含まれるのであろう。具体的な話は岸田政権への懐疑的見方を低減させると考えられ、市場にポジティブな影響が想定される。

もう一つ、「日本製鉄、トヨタと中国・宝鋼を電磁鋼板特許侵害で提訴」のニュースがあった。宝鋼の反応がなく、トヨタが戸惑いを表明と、今のところ実情が分からず判定し難いが、日本企業が技術漏洩・盗取に厳しい対応を取り始めた可能性がある。日本製鉄が韓国ポスコの技術盗取裁判に勝ったことは、日本の対韓曖昧姿勢の是正に働いたと思われる。

米ゴールドマンサックスの投資銀行部門トップは、全てのテクノロジー分野の投資を強化する方針を表明した。AIや量子コンピュータ、合成生物学などいわゆる先端技術に目が向けられがちだが、従来産業とテクノロジーが「重なる分野」も重要とした。投資基準に技術判断の重要性が増そう。日本企業が活発な動きを見せ始めているのはプラス材料。

16日日経新聞一面に「日本の年収30年横ばい」という記事があった。かつてマンスリー4月号でも「安いニッポンからの脱却」でも書いたように、富裕層も含めた国民全体の生活水準が地盤沈下しているのだ。与野党ともに「分配」を強調しているが、「分配」のためのパイを拡大するほうが優先度は高いはずだ。岸田首相は総裁選前といくらかトーンが違ってきている。この辺りが同氏の弱点でもあり筆者は「短命」と見ている。

 

【米市場中心にインフレ巡る攻防激化】

先週前半は世界的に商品高騰や電力危機でインフレ懸念が強まる一方、景気回復ペースの鈍化懸念から、インフレと景気停滞が同居する「スタグフレーション」懸念が強まっていた。NYダウは816日、ナスダックは97日に最高値を記録して以降、調整場面が続いているが、(一部に20%急落論もあったが実現していない)その調整の大きな要因となっている。

13日は、9月米CPI(消費者物価指数)、9FOMC議事録公表、決算発表のトップバッター・JPモルガンの発表、バイデン政権の供給網対策第一弾発表、EUの天然ガス共同購入検討など、市場の見方に影響を及ぼしそうな材料が相次いだが、債券相場は短期金利上昇、長期低下、株式相場はダウ低調、ナスダック小確りの展開だった。方向感を得たと言うより、目先的売買中心だったように見える。

「インフレは一過性」とか、「FOMCは来年利上げできず(11月のテーパリング開始の度胸もないとの極論もある)」、「市場は一旦大幅に調整」とかの悲観論も出ているが、そちらも実現していない。ドイツ銀の調査では「主要中銀が金融政策で誤りを起こす可能性」まで指摘された。不透明感の大きな要素に中国情勢があり、展望を描き難い状況が続いていると考えられる。皮肉にも、週半ばは台風警報で香港市場が終日休場となり、小休止と言うか、模様眺めムードを強めたと思われる。

米債では、13日金利見通しを反映しやすい2年債利回りは一時0.39%台、昨年3月に戻った。逆に10年債は1.54%台、30年債は2.04%台に低下した。9月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比で前月の+5.3%から+5.4%に小幅上昇しただけだったが、FOMC議事録で11月テーパリング開始方向を確認、FF金利先物市場では「229月までの利上げ開始をほぼ織り込む」と伝えられた。14日には同じく9月のPPI(生産者物価指数)が発表され前月比∔0.5%(予想は∔0.6%)と今年になって最も低い伸びであったため、インフレ懸念が一気に後退、NYダウを押し上げた(好業績が続き534ドル高)。

先週のNYダウの騰落率は1.58%、日経平均は3.64%だった。いずれも週の後半から戻し始めた。週前半は米市場で高インフレ定着への懸念が強く、利上げ前倒しにFRBは迫られるのではという見方で株価は圧迫を受けていた。金利が上がる場合の主因が景気回復に伴う「良い金利上昇」と急激なインフレに伴う「悪い金利上昇」とがあり、週前半は市場の見方が後者に傾いていたことによる株価下落であり、後半はその修正局面であったと見ている。

 

【経済論議はコロナからインフレやサプライチェーン問題に】

日本は劇的なコロナ感染収束に向かっている。原因論議は盛り上がっていないが、ワクチン接種拡大、人流抑制効果、秋風邪は流行らないなど様々。専門家に戸惑いも見られるが、静かに、「ウイルス自滅」説が再燃している。終息した格好で時間が経たないと評価されないかも知れないが、年末年始再流行警戒は徐々に薄れて行く可能性がある。

「ウイルス自滅」は「エラーカタストロフの限界」として、1971年にドイツの科学者マンフレート・アイゲン博士が発表した。博士は1967年のノーベル化学賞の受賞者。大雑把に言えば、ウイルスは増殖する際に遺伝子のコピーミスを起こす。変異株はこれを指し、DNA型よりRNA型(今回のコロナウイルスが該当)が多い。感染力の強いすなわち増殖力の強いウイルスが出現するが、同時にコピーミスも急増する。ある一定の閾値(しきいち、動作や意味などが変化する境目となる値のことをいう)を超えると、ウイルス生存に必要な遺伝子も壊れ、自壊していくと言うもの。自壊で消滅するのか、生き残ったところから新変異が再爆発するのかは分からない。

コロナ後遺症研究が発表されたが、町医者で「コロナ後遺症」外来を設けた所には「ワクチン後遺症」患者が押し寄せていると言う。「ワクチン批判」につながる恐れがあるためか、「ワクチン後遺症」は十分に説明されていない。一般に、接種者の50%程度に一時的免疫抑制や免疫調節不全を誘発する可能性があり、様々な病気を誘発する(今のところ1~3%程度か)と考えられている。ワクチンとの因果関係証明できない。

米国は101日現在で、ワクチン接種後の有害事象報告77.8万件、死亡者16310件と報告されている。人口の多い分、「ワクチン後遺症」の本場と見られるが、「接種第一」や義務化議論が依然優勢だ。コロナウイルスやワクチン、治療薬の是非議論が抑え込まれているため、コロナが経済に与える影響議論も表面上は薄れている。ワクチンや新薬は本当に有効か、との議論が出来ていない。その分、経済論議がインフレ・サプライチェーン問題の議論に傾くことになる。

11日、BofA(バンクオブアメリカ)のアナリストが「22年業績予想はひどい内容になる恐れがある」と警告した。サプライチェーン問題の悪化を理由に挙げた。米ゴールドマンサックスのエコノミストは米成長率見通しを、215.7→5.6%,224.4→4.0%に引き下げた。個人消費の回復遅れを要因に挙げた。FOMCは「来年利上げせず」との見通しも示した。

米株の重石と見るか、押し目買い好機と見るか、で意見が割れているが、表面上はコロナに言及していないことが印象的。潜在的なコロナ問題も踏まえながらの攻防が続くものと考えられる。

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