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2022年03月14日

【Weekly No.326】米利上げ止むナシの見方、長期金利2%台の攻防か

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  1. 米利上げ止むナシの見方、長期金利2%台の攻防か
  2. 欧州急反発、買い戻し主導
  3. 下落スピードがやや鈍ってきた株式市場
  4. ロシア撤退の動き、ロシア産原油・ガス制限、事業撤収急ぐ欧米

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Weekly 314

【米利上げ止むナシの見方、長期金利2%台の攻防か】

根本的解決が見通せないので、どうしても欧州市場が脆弱だ。ただ、なし崩し展開になる可能性があるので、ロシア衰弱化を睨む展開と考えられる。

初の外相会談不調は想定内と見られ、ラブロフ露外相の責任逃れ的発言が目立った。ロシア国防省は「人道回廊」で、11日は限定的停戦を宣言し、五月雨的な停戦実施でグダグダした状態が続くものと思われる。

ロシア封じ込めが加速している。BIS(国際決済銀行)がロシア中銀の参加停止、米銀大手ゴールドマンサックスとJPモルガンが相次ぎロシア撤退を表明。リーテール部門売却が頓挫したシティGは企業の撤退支援に乗り出していると言う。ロシア中銀の外貨引出制限は9月まで、米ドル換算上限は5000ドルになった。

資源大手リオ・ティントはロシア企業との全ての商業関係を終了する。ロシアのアルミ大手ルサールとの豪合弁事業、モンゴル鉱山の燃料調達をどうするかなどが注目されている。資源関連で衝撃的なのは、イエレン米財務長官はワシントンポスト紙のインタビューに答えて「ロシア産原油を購入する中国の能力が制限されており、中国政府はロシアへの制裁圧力を大幅に相殺または軽減していない」。中国金融機関がドルやユーロ取引で制裁影響を懸念しているためと発言。

オリガルヒ制裁でロシア富裕層が一気に厳しくなっている。「ビリオネア・インデックス」によると、富豪の富の総額の対GDP比は侵攻直前の223日で21%弱、米国、スウェーデン、仏、インドなどの15%程度を大きく上回っていた(ちなみに中国6.4%、日本は1.8%)。

ロシアは33日時点で15%超に急落、その後株式市場閉鎖で計算不能。ロシアから脱出する富裕層、知識人、反プーチン・反戦の人々が急増、フィンランド行き列車やバスの切符は取れない状態と伝えられる。

旧ソ連のアフガン侵攻は10年続いた(撤退後2年でソ連解体)が、制裁が厳しい今回はアッと言う間に崩壊する可能性が出てきている。

10日はECB(欧州中銀)が資産買い入れ策を第3四半期に終了する「金融引き締め加速」を発表した。米CPI(消費者物価指数)は前年同月比+7.9%、前月の+7.5%から加速した。

今週1516日開催の米FOMCでの利上げは確実視されている。ただ、凄まじい商品相場高騰から、市場のムードは「金融引き締め止むナシ」に傾いている。むしろ、不況入りを象徴する「長短金利逆転」を警戒するスタンス。債券運用最大手PIMCOは「政策金利2%前後のニュートラルな状態を見込む」とている。10日の米10年債利回りは一時2.021%と217日以来の2%台乗せ、2年債は1.735%で10年債とのスプレッドはやや拡大した。緩やかな金利上昇が前提だが、今週のFOMCインパクトはすでに金利が上昇しており、いくらか軽減されると考えられる。

 

【欧州急反発、買い戻し主導】

9日の日経平均は中国株の急落で腰砕けとなったが、夕刻からの欧州株急反騰、原油相場急落を受けNYダウも大幅反発、当然翌10日の日経平均も反発し972円大幅上昇し3.95%高。ただし、翌11日はメジャーSQだったが、527円下落し2.05%安。この2日の市場を見ても、価格の振幅が非常に大きいのは、ウクライナ危機の行く末というより資源価格の上昇に伴うインフレに対し不透明感が強いからだろう。

9日中国株は、上海も香港も一時3%超の下落、引けは下げ幅を縮小したが、世界混乱に無縁と言う訳にはいかないことを示唆した。下落要因が重なった。後述のニッケル生産最大手・青山控股集団はJPモルガンや中国建設銀行などから資金提供の確約を得た(今までのメインは中国交通銀行とされる)と報じられたが、対ロ制裁で漁夫の利を得ると思っていた市場に衝撃を与えたと見られる。

加えて、ノルウェー政府系ファンドがスポーツウェア大手の李寧株をポートフォリオから外したと発表。「深刻な人権侵害」関与リスクを挙げている。株価は8%超の急落。米レモンド商務長官は米国の対ロ輸出規制に違反する中国企業に米国技術製品の供給を止める可能性があると警告した。半導体関連やソフトウェア関連がターゲットになると伝えられた。米ゴールドマンサックスは中国経済の今年の見通しについて「目標を1ポイント下回る方向」と成長率予想を4.5%に据え置いた。

台湾市場で7-8日の海外投資家の売り越しが約46億ドル(5330億円)に達したと報道され、9日の中国市場でも中国A株市場での資金流出額72億元と伝えられ、直近の日本株下落も海外勢の手仕舞い売りが出ていたと思われる。

その一巡タイミングと売り方が買い戻しに動いたことが重なり、前述したように9日欧州株が急騰した。独+7.92%,仏+7.13%,伊+6.95%など。ユーロが急反発し、1ユーロ=1.10ドル台を回復した。10-11日のEU首脳会談前(売り方にとっては共同債発行などの対策警戒)の買い戻しから、UAEやイラクが原油増産に賛同を示したことで原油相場が急落(一時17%安)、買い戻しの動きに拍車を掛けたと見られる。

チェルノブイリ原発の停電報道に怯まなかったが、ウクライナ情勢に対しては微妙。米国がウクライナへの戦闘機供与を認めなかったこと、独ロ電話首脳協議を行ったこと、「人道回廊」拡大などの動きから、市場は停戦協議に神経質になり始めている可能性がある。

個人消費の象徴的存在のマクドナルド、スタバ、コカ・コーラ、ペプシ、ユニリーバなどが一斉にロシア事業停止を発表したこともロシア側には衝撃だったと思われる。やや道草を喰ったが、リバウンド力を試す局面と考えられる。

 

【下落スピードがやや鈍ってきた株式市場】

先週前半あたりから世界の株式市場は続落基調ながら、やや下落スピードが鈍った印象。ブルームバーグが「10-11日にパリで開催のEU首脳会議後に、大規模な債券共同発行計画を発表へ」と伝えたことでユーロが反発、米債利回りが上昇した。エネルギーや防衛向け資金を確保する為で、「相当な規模になる可能性がある」。

ジョンソン英首相は近く、新たなエネルギー供給戦略を打ち出す意向を表明(例えば、ロールスロイスが計画するSMR:小型モジュール原子炉の承認手続きを開始するよう7日に規制当局に要請した動きなどが該当すると見られる)。

また、ハンガリーが穀物輸出全面停止、中国が「冬小麦収穫史上最悪」と伝わるなか、11日にG7農相会議を開催予定。経済面では、対策動向に関心が高まろう。

市場混乱を象徴する存在にニッケル相場がある。2営業日で一時250%暴騰し、LMEは取引停止に追い込まれた。ロシアが大手供給国のためだが、相場暴騰で中国商品業界の大物が数十億ドルの評価損を出したと伝えられた。世界最大のニッケル生産会社青山集団によるショートポジション手仕舞い(買戻し)による動きと見られている。いわゆる混乱が混乱を呼ぶパターンだが、株式市場などでも起こっていると考えられる。新たな売り仕掛けとともに、手仕舞い損失の動向も睨むことになろう。

 

【ロシア撤退の動き、ロシア産原油・ガス制限、事業撤収急ぐ欧米】

ウクライナ情勢は大きくは変わらず、ロシア遮断の動きが目立った。KPMGPwC、デロイト、EYの大手会計事務所がロシアとの関係断絶、ボーイングがロシア産チタンの購入停止、ロンドン貴金属市場協会はロシア業者を全て公認リストから外した(金融機関は公認業者しか取り扱わない)。JPモルガンはロシア全債券を指数から除外。アメックス、TikTok、ネットフリックスなどもロシア事業停止。

ルーブルは最安値更新、一時1ドル150ルーブル、2月上旬は75ルーブル程度だったので価値半減だが、下げ止まる気配はない。ロシア債CDS(クレジット・デフォルトスワップ)は過去最高水準に撥ね上がり、計算上のデフォルト確率は80%と見做される。ロシアのドル建て債発行残高は330億ドル。スイス・UBSと仏クレディ・アグリコルはロシア・ベラルーシ・ウクライナ債権は「限定的」と発表したが、想定外リスクがあると発表した。中国当局も銀行のロシア関連事業調査に乗り出した。

16日ロシア国債の利払い期限が迫る(今回は円で約135億円)。12日早朝のTBSニュースでは、デフォルト(債務不履行)になっても(世界の)金融システムがおかしくなる可能性は極めて低いと伝えている。ロシア向けの与信は多くないからだ。 ただ、日本で公的年金を運用している「GPIF」は、運用全体の0.1%にあたるおよそ2200億円のロシア関連資産を保有。三井物産は、ロシア向けの投資や融資などの残高がおよそ4600億円あることを明らかにしている。

焦点となる欧米のロシア産原油・ガス購入停止については、EU10-11日に首脳会議を開催、当面8割削減を目指す方向が伝えられる。7日、米英独仏首脳はオンライン会議を行い「ロシアに更なる代償を払わせる」決意で合意。ドイツが動く。5日、独経済省は国内初のLNG輸入ターミナル建設で復興金融公庫、電力大手RWE、オランダガス会社ガスニーと覚書調印。約4.5億ユーロ規模。ロシア産全てをカバーするには総額700億ドル規模が必要と言われている。突然、ロシアが正常化すれば無駄になる恐れとの鬩ぎ合い。また、財務相はドイツの産業転換に、26年までに2200億ドル投資する意向を表明した。

岸田首相は国民に向かって「省エネ」要請。自民党宏池会の創設者池田勇人首相が米価高騰に対し「貧乏人は麦を食え」と言ったことは有名。大平首相は第二次オイルショック時に「省エネ、省エネ」しか言わなかった。伝統なのか。原発再開に対しても、安全保障に対しても「非核三原則」。左翼の核アレルギーに配慮した姿勢で、エネ危機緩和策も出て来ない不満が高まっている。日本企業のロシア事業撤退も欧米に比べいくらか様子見状況だったが、ここに来てようやく加速してきた。吉と出るか、凶と出るか分からないが、市場に戸惑いが広がる恐れがある。サハリン資源の総合商社大手、自動車産業、撤退しないと表明したユニクロ(ファーストリテイリング、ロシア店舗49店)も一転して撤退を決めた。同社は政治とビジネスは不可分という世界の流れを見誤ったようだ。株価は17か月ぶりの安値に沈んだ。

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