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- 【日経平均ひそかに9連騰、3月末を意識】
- 【「悪い円安」論の台頭は正しいのか】
- 【野村が海外で日本株推し】
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Weekly 3月28日
【日経平均ひそかに9連騰、3月末を意識】
25日まで予想外の日経平均9連騰で、3月9日から3000円以上戻して来た。改めて市場の動きの早さに驚かされる。ここまで来ると、今週残り4営業日、3月末期末の株価が意識される。比較対象の12月末は28791.71円(TOPIX1992.33)、昨年3月末は29178.80円(同1954.00)、9月末は29452.68円(同2030.16)。NT倍率(日経平均÷TOPIX)が低下しているので微妙だが、TOPIXの2000ポイント台通過(25日現在1981.47)、NT倍率14.5倍(同14.21倍)回復が焦点と考えられる。
その要因は、まず円安にある。短期的な目線は米金利動向が焦点となる。24日の米市場は10年債利回り2.36%(25日は一時2.50%、引けは2.48%)、2年債は2.13%(同日2.30%)に上昇、ドル円は24日に122.40円の円安(25日は122.06円)。
この日発表の米週間新規失業保険申請件数が1969年9月以来(52年半ぶり)の18.7万件となり、景気失速懸念が後退、賃金インフレ継続の見方に傾いたこと、半導体大手エヌビディアやインテルなどが積極投資姿勢を示し株式市場で好感されたこと(エヌビディア株は9.8%高でテクノロジー株の上昇を牽引。日本でもキオクシアが1兆円投資を発表している)などがある。さらに、米ゴールドマンサックスが年末の米債利回り見通しを、10年債2.7%(従来2.25%)、2年債2.9%、30年債2.75%に引き上げた。長短金利逆転だが、必ずしも景気後退のシグナルでないと表明したこと、などが要因と見られる。ノルウェー、メキシコ、南アなどが利上げに動き、日欧が遅れたとしても、利上げは米一極の流れではなくなりつつあると見られる。
NATO首脳会議、G7サミットなどは決定的材料とはならなかったが、ウクライナ軍が南東部アゾフ海に面したベルジャンシク港でロシア揚陸艦一隻を撃沈、一隻を大破と発表(同港はロシア軍の重要補給路)するなど、ロシア苦戦の見方も背景と見られる。28日からはロシア最大銀行のズベルバンクも制裁対象に加えられる。ロシア株式市場は24日、1か月ぶりに部分再開したが、事実上売り禁で機能は戻らないと見られる。鉄鋼大手セベルスタリが23日までに利払いが出来ず、企業デフォルト第一号となる可能性が出ている。
プーチン大統領は非友好国との原油・ガスのルーブル取引を言明したが、取引縮小の方向になる(日本もサハリン断念が迫っている)。G7声明にある通り、核使用、化学生物兵器の脅威があるので、緊迫感は続くと見られるが、ロシア抜き経済への動きが加速すると見られる。
【「悪い円安」論の台頭は正しいのか】
24日NY市場で円は1ドル122.41円を付けた。前述の週間新規失業保険申請数が18.7万件と、なんと1969年9月以来の低い数字が労働市場の強さを表しており。このためドル高、円安が進行した。最近、日本の経済や株価にプラスなのは円安か円高か、金融市場でも議論が白熱している。原油など資源価格が高止まりする中で「悪い円安」論が台頭。確かに輸入物価の上昇に円安は一役買っている。しかし、経済をトータルで見るなら円安の方がメリットは大きいとの見方も依然多い。為替変動が日本経済に与える影響をマクロ経済モデルでみると、日銀や内閣府のモデルでは、実質GDP(国内総生産)の増加に寄与するのは円安だ。日銀の1月展望リポートでは10%の円安でGDPが1%程度押し上げられる計算が示されている。
大和総研が1月に発表したリポートでは、対ドルで10円の円安は企業の経常利益を2%押し上げる。ただし、現地生産化の進展で輸出数量はそれほど伸びないが、為替換算で企業収益は増加し、設備投資や企業間取引の拡大による波及効果が表れるそうだ。
ただ、円安メリットは以前より小さくなっている。それは、中小企業・非製造業で輸入依存度が高くなっているほか、消費財も輸入品ウエートが大きくなり、家計の購買力は円安時に低下しやすいからだ。足元のドル高/円安に対する日本株の反応は一定していないのは、こうした円安メリットの低下が一因とみられている。今年に入って3月初旬までは緩やかなドル高/円安が進む中、日本株は下落していた。だが、3月初旬以降は円安・株高の組み合わせになっており、相関関係が以前と比べ非常に不安定だ。
円安は日本にメリットだとしても、通貨安は国力低下と受け止められるおそれもある。対外証券投資は年初からの累計で売り越しであり、キャピタルフライト(海外への資金逃避)はまだ起きていないが、経常収支は赤字化し、対外純資産の世界首位も危なくなってきた。
そうしたなか、衝撃的だったのは、ウクライナ危機でリスクオフの円買いがほとんど出なかったことだ。ここにきて円は安全通貨とは認識されなくなっているのかもしれない。
日本はアベノミクスの初期に生じた円安を十分活かせず、国際競争力は低下を続けてしまった。ウクライナ危機が「新冷戦」の始まりと警戒される中、国際経済で日本の位置を確保できるのか。官民合わせた戦略的な取り組みがなされなければ、円安のデメリットは強まり、日本株は米国の株価に連動するだけとの警戒感は市場でも強い。
「悪い円安」論を聞いていて心配なのは、「悪い円安」論を利用して日銀が金融政策を引き締め方向に転換(円高転換)しようとすることが心配になってくる。岸田首相(経済音痴?と思うが)に「悪い円安」という言葉がもっともらしく響くようだとマズイ。
そもそも、為替の専門家の予想はまず当たらないことは承知しておくべきだ。どうしてなのか分からないが、まず専門家の予想は外れると思って対応された方がいい。例えば、今年は年初からほとんどの為替ストラテジストは年内円高、1ドル100円接近という専門家もいた。
筆者は円相場の短期的、例えば、2,3か月の予想はほとんど不可能と思っている。では何をベースに円相場を見ているかといえば、チャートだ。しかも変動相場制開始以降の超長期のチャートを見ている。このチャートを見ていると、73年2月に固定相場制から変動相場制に移行、まもなく50年経過したことになる。変動相場制以降、2011年10月の1ドル75.85円が円高のピークになっており、その時まで円高トレンドが続いたのだ。変動相場制移行から円高トレンドの中、最初の円安のピークは74年8月の303.12円、次の円安のピークは82年10月の278.50円、そこから90年4月の160.35円が次の円安のピーク、さらに98年8月の147.63円が次の円安のピーク。ここまで8年おきに円安のピークが来ているが、次の円安のピークは9年後の07年6月の124.16円、そして11年10月が30年続いた超長期の円高が終焉(?)、07年から8年後の15年6月にアベノミクスによる125.65円の円安を付けた。このように、前の円安から次の円安まで必ず8、9年を要している。今回も、前の円安は2015年だったから次の円安は2023年、おそらく前回の円安125円レベルまでの円安はありうると思っている。この8年周期の円安論は5,6年前セミナー等で紹介していたので、ご存知の方もいらっしゃるのでは。
【野村が海外で日本株推し】
普段、新聞や雑誌の相場論を読むことはあっても、ほとんど無視か頭に残らない。むしろその相場観に対し逆の見方をする習慣がついている。理由は簡単で情報が公開された段階で、その内容はすべて価格に織り込んでいるという「効率的市場仮設」という学説を有効と見ているからだ。24日付け日経新聞の証券欄にあるコラム「スクランブル」を見ていて、なるほどと思った(滅多に思わない)。この日の「スクランブル」の見出しは「日本株推し、野村の真意」。野村は29日から欧米4か国で「キャラバン隊」で日本株を売り込むマーケッティングを開始するそうだ。筆者が海外にいた80年代は年に数回東京の株式部や日本株アナリストと一緒に顧客訪問をした経験がある。90年代から途絶え、野村も今回7年ぶりのため、「キャラバン隊」を憶えている投資家もいないのではないかと思ったりする。
「スクランブル」によると、今の日本株の低迷はリモートが定着したことで海外投資家も公開情報を簡単に入手でき、リモートの普及で日本株への関心が薄れてきたとしている。
その要因をコロナ禍に起因するとしているが、それ以上に根深い要因があるかと思う。今の海外投資家はリモートでマクロ要因から日本株を見ているかもしれないが、30数年前は直接企業を訪問する海外投資家が多かった。野村がキャラバン隊を始めた79年ころは、日立やソニーの技術の高さをアピールしたが、現在も日本企業には世界的に高いシェアを持つ企業が多いのだ。こうしたミクロを見ず、マクロしか見ない海外投資家へのアピールが足りなかったのだろう。
足元では連続利上げが視野に入ってきた米国株の保有を下げ、資金の振り向け先として日本株をと考えるのは、当然であり、野村も米利上げをキッカケにキャラバン隊をスタートさせるのだろう。ウクライナ危機、コロナ禍、米利上げを背景に世界の投資家の資産配分は大きく変わる。我々は先進国株では日本株しか残っていないことを忘れてはいけない。
このコラムは最後に、日本株の不安材料は岸田政権の「新しい資本主義」に対する投資家の強い不信感であり、「岸田首相が日本株の命運を握っていると」という言葉で締めくくっている。