News & Topics

News & Topics

2022年05月09日

【Weekly No.334】米金利上昇、米株底割れの兆し

会員様専用レポートです。

このレポートが、皆様の資産運用の一助になれば幸いです。

※期間限定で、パスワード不要で全文お読み頂けます。

■■------------------------------------------------------------------------------------------------■■

  1. 米金利上昇、米株底割れの兆し
  2. 前回のQTと比べる

■■------------------------------------------------------------------------------------------------■■

Weekly 59

 【米金利上昇、米株底割れの兆し】

日本のGW中に開催された米FOMC(連邦公開市場委員会、金融政策を決める会合)に対して市場の反応は驚くほど大きかった。まず発表の4日はNYダウ932ドル高、翌5日は同1063ドル安とジェットコースターの乗っているかのようだった。NYダウは形の上では「FOMC前に売り込み、通過で買い戻す」パターンはあったが、動きが早く、4日に上げた分下げ圧力が強まった格好で5日には米株は底割れ症状。下げの中心のナスダックは647ポイント、4.99%安で、下落率は206月以来、水準は2011月以来。コロナ金融緩和相場の大部分を吐き出しつつあり、主力株が軒並み4~8%安、全面安症状となった。

背景は一旦緩んだ米金利が再急上昇したことと伝えられる。4日のFOMC後の会見でパウエルFRB議長は0.75%利上げを「積極的に検討しない」としたため、10年国債の利回りは0.04%下げて2.93%。しかし、翌5日の米短期金利先物市場で「6月利上げが0.75%である確率が約75%」と見ており、これはFRBの利上げスタンスではインフレを抑え込めないと見ているのか、ロシア制裁の拡大・長期化で運用資金圧縮が本格化してきている影響か、大幅な景気後退まで懸念し始めているのか(今までの金利上昇の割に株価調整は小幅だったとの見方。本格的な調整場面との位置づけ)、主因を探ることになろう。

5日の米債利回りは10年債が一時3.1%台となった後3.05%前後、前日から0.14%と大幅上昇。2年債は2.71%台、30年債は3.15%前後。一時発生した長短逆転には至っていない。

6日は雇用統計発表。雇用増減より賃金インフレ圧力を注視した。平均賃金は前年比∔5.5%、前月比は∔0.3%、前月比は予想を下回った。失業率は3.6%と前月と変わらず。これで労働市場は底堅さを維持、まだ勢いがあることが確認されたようだ。このため、この日10年国債利回りは一時3.14%まで上昇している。

また、5日の米労働省発表の第1四半期非農業部門労働生産性(速報)は年率換算前期比7.5%低下、実に1947年以来の低下幅。単位労働コストは前期比11.6%、前年同期比7.2%の急上昇。しかし原油価格はEUが対ロ制裁第6弾で「ロシア産原油の年末輸入禁止」を打ち出したこととOPECプラスが6月も増産を打ち出さなかったことで高止まりしている。

9日に控えるロシアの対独戦戦勝記念日は、パレード縮小、ウクライナでの勝利宣言できず、などが伝えられているが、「ウクライナ以外への侵攻拡大」、「核使用懸念」などは消えていないため、週末の緊張要因と考えられる。日経平均とNYダウの絶対値差は一時7800まで開いていたが、シカゴの先物ベースで6300程度まで縮まって来た。それほど米株の下げがきついということか。

日本の首相が外遊先で政策をぶち上げることは過去によくあったが、岸田首相はロンドンで、「エネルギーに10年で150兆円投資、原子力も活用」、「対ロ追加制裁、英軍との円滑化協定」を表明、また、共同通信が「新しい資本主義の科学技術振興策で量子技術、AI重視」(量子技術生産額203050兆円目標)を伝えた。独自性発揮で、米株連動安を何処までカバーするかが注目される。

 

【前回のQTと比べる】

今回、4日のFOMCで政策金利の誘導目標の0.5%引き上げとともに、6月から保有資産の縮小、いわゆる「量的引き締め(QT、資産縮小)」も決めた。計画では前回のQTのほぼ2倍のペースで開始することになる。

FRBの保有資産は、新型コロナウイルスのパンデミック対応で約2倍の約9兆ドルに膨張していた。そうしたなかでインフレ高進に直面し、これを短期間で圧縮しようとしている。

前回のQT2017年から2019年に実施している。今回のQT計画と比較してみると、今回のQTは、最初の利上げを決めた3月のFOMCの次の5月の会合で決定した。これに対し前回のQTは、1512月の最初の利上げから2年近く経過した17年秋だった。QTの開始は前回より相当早めということになる。今回は政策金利を0.5%引き上げ、0.75%~1.00%にしたが、前回は政策金利1.001.25%でQTを発動したのだ。

4日の発表によると、QTは6月から開始する。規模は8月までは月475億ドルで、9月から月950億ドル(国債600億ドル、住宅ローン担保証券=MBS350億ドル)となる。これは前回の最大月500億ドル(国債300億ドル、MBS200億ドル)のほぼ倍だ。

前回のQTでは、1年かけて月あたりの縮小規模を500億ドルまで拡大した。まず月100億ドルで開始し、18年秋に500億ドルにするまで、四半期ごとに100億ドルずつ増額したのだ。今回は、3カ月で最大規模の950億ドルに引き上げることになり、加速度的に資産を圧縮することになる。

FRBにとって初めてだった前回のQT開始時、保有資産は約45000億ドル。これを約2年で約6500億ドル減らし38000億ドル強にした。今回は、1年間で11000億ドル超削減する予定で、前回の削減総額を上回る。エコノミストの多くは、3年で約3兆ドルの縮小が目標とみている。

前回のQT開始後も、米株は当初、上昇を続けていた。米10年国債金利は179月末の2.3%から1810月には3.2%まで上昇したが、S&P500 は約1年で約15%上昇した。しかし、18年末にかけて株価は急激に下落する。

当時、米中間の緊張が高まり、貿易摩擦などが懸念される中で、過去最高値にあった米株が一気に調整したとみられているが、弱気相場入りとされる2割の大幅株安となった背景には、FRBQTもあったとの見方が多い。

QTが株安要因となる波及経路としては、FRBが保有国債の規模を縮小して国債需給が悪化、長期金利の上昇で株価が下押しされることが考えられるが、投資家の心理の冷え込みも相当影響している。おそらく今回も同様であろう。縮小規模も前回より大きく、何よりも加速度的に資産圧縮をするため株価への影響は避けられないだろう。どうやら金余り相場の終焉の始まりなのかもしれない。

PAGETOP