News & Topics

News & Topics

2022年05月30日

【Weekly No.337】少し朗報、しかし市場の注目は希薄

会員様専用レポートです。

このレポートが、皆様の資産運用の一助になれば幸いです。

※期間限定で、パスワード不要で全文お読み頂けます。

■■------------------------------------------------------------------------------------------------■■

  1. 少し朗報、しかし市場の注目は希薄
  2. 欧米株との連動性と日本の違い
  3. 撤収合戦、中ロ分離の方向
  4. 米株、底値圏探る攻防

■■------------------------------------------------------------------------------------------------■■

Weekly 530

 【少し朗報、しかし市場の注目は希薄】

26日のNYダウは大幅高(1.6%高)、特段の材料もなかったが、先々週まで8週連続の下落に対する買戻しもあって27日まで6連騰。NY株高を受けて27日の日経平均も343円高で始まった(ただし終値は176円高)。あまり注目されていないが、26日夕刻、理化学研究所と東大の共同開発で「短時間、PCR検査並み、多種類ウイルス検査装置」が報道された。基礎技術は昨年4月に発表されていたもので、検体ウイルスを識別する酵素や特殊蛍光物質で検知する。1回の測定時間は9分程度、1回のコストは200~250円程度と画期的。自動検出装置は「opn-SATORI(オープン・サトリ)」と名付けられている。

このニュースは2つの面で注目される。一つは、偶然かこの日、岸田首相は610日から外国人観光客の受け入れを表明した。岸田政権の政策で実行したのは年初の鎖国だけ、と揶揄されて来た岸田首相にとって、大きな方向転換となる。1日の入国者数は61日から2万人に引き上げられる。中国は出国規制を行っているので、主眼は欧米と新たなビジョンを打ち出す予定のASEANになる。水際作戦への不信感は根強くあるので、(「実用化は遅くとも来年度」だが)監視体制強化、中長期的な不安軽減に貢献し、開国を後押しすると期待される。

もう一つは共同開発のシスメックス(6869)株。海外比率85%の国際的臨床検査機器メーカーだが、株価は今年1月高値15715円から512日安値7415円と大きく下落している。いわゆる値がさ株の一角。この材料にどの程度反応するかと思っていたが、結局無反応(27日の株価は70円安の7710円)。株式市場全体への心理な影響も見られなかった。なお、同社の税引前利益は前期39.1%増益、今期予想12.7%増益だが、予想PER32倍台。

530-31日にEU臨時首脳会議が開催される。ロシア産原油禁輸措置を決定するか注目される。依存度の高いハンガリーが反対するなど紛糾が予想されるが、ロシア軍再攻勢の動きもあり、歴史的決断に至るか注目される。原油相場は反騰含み、ロシアは盛んに牽制球を投げている。遠目に見れば、ウネリが出て来ることは相場底入れのシグナルの一つと考えられる。

 

【欧米株との連動性と日本の違い】

二次的影響ながら、足元の調整要因の一つの規模が報告された。ヘッジファンドに関するデータだが、ファンド管理会社シトコ・グループは「ヘッジファンドから年末までに200億ドル引き揚げられる」との見通しを発表した。1-3月は差引136億ドルの純流入(解約390億ドル)に対し、4-6月は135億ドル流出、今年後半は63億ドルの流出との見方。

1-3月に利益を出したファンドは40%に止まり、タイガー・グローバル、メルビン・キャピタルと言ったファンドは大きな損失を出したと言う。資金の流出が運用不振によるものか、ロシア・オリガルヒマネーや中国「共同富裕」策によるチャイナマネーなどの流出なのか、内容は不明ながら、不安心理は限定的になり、オイルマネーなどの流入期待とのバランスに関心が移るものと考えられる。なお、EUが凍結したロシア中銀資産は25日現在約245億ドルと予想を大幅に下回った。

ロシア側は世界で約3000億ドルが凍結されたと発表しており、G7では日米主体の凍結だった可能性がある。EUはロシアのオリガルヒ・マネーを、テロ、マネロンなどと並ぶ犯罪扱いにする方針を発表、法制化を急ぐ。ロシアマネーは既にUAEなどへのシフトが伝えられて(ドバイの不動産活況など)いること、対ロ制裁の影響で縮小すると見られることなどから、影響度は不透明化、縮小すると思われる。

53-4日のFOMC議事録が25日公表され、「6,7FOMCでの0.5%ずつの利上げ、インフレへの強い警戒姿勢」が示された。ECBもラガルド総裁が「9月末までにマイナス金利からの脱却」意向を表明している。

これを先取りする格好で24日、資産運用最大手ブラックロックは「先進国市場の株式投資判断を中立に引き下げた」。「中央銀行による過度の引き締めと中国と欧州の景気悪化リスクが高まっている」ことを理由に挙げた。追随するように25日、IIF(国際金融協会)は22年世界GDP成長率予想を従来の+4.6%から+2.3%に半減、引き下げた。先進国は+1.9%だが、年後半は欧州マイナス成長リスク、中国は+3.5%に大幅減速見通し。

これに対し、黒田日銀総裁は日銀主催の国際会合で挨拶し、「適切な金融政策対応は国ごとに異なる」と述べた。先週のG7財務相・中銀総裁会合で「強力な緩和策を続けると説明した」。インフレ構造の違いを強調している。世界市場はまだ連動して動いているが、徐々に違いを織り込む方向に動くと想定される。

弱材料に変わりはないが、米株波乱に日本株はそれほど連動しなくなっていた。しかし後述するが、先週前半までに欧米株式市場に資金が流入し始めている。その影響か先週の騰落率は、日経平均はわずか0.19%高に対し、NYダウは6.24%高、ナスダックは6.58%高、英国株は2.65%、独3.45%、仏3.67%高と欧米の株高が目立った週でもあった。

岸田首相が「防衛費大幅増強」、「経済安保強化」などを打ち出しながら、なかなか具体策に踏み込まないので、欧米との違いの認識が遅れている点であろうか。

アルバニージー豪新首相が「LNG、水素、高速鉄道など、日本ほど協力できるパートナーはいない」とエールを送った。日本の違いを意識したいところだ。

 

【撤収合戦、中ロ分離の方向】

日米首脳会談は「安全保障」が前面に出る内容だった。岸田首相はなかなか具体策に踏み込まないので、「防衛費の相当の増額」としか言わなかったが、(反対を招かないよう慎重姿勢で)参院選後と見られる具体策が色々取り沙汰される流れが想定される。経済面では、7月に「経済版2+2(日米両国の外交担当と防衛担当の2人の閣僚がメンバーであることから付けられた通称)」開催を決めたので、最先端半導体、宇宙事業などの動きに拍車が掛かると期待される。

裏の動きとして、21日にWSJ紙が「米アップル、一部製造委託先に中国以外での生産を増やしたいとの意向を伝えた」と報じた。中国の反応を含め、続報は今のところないが、インドやベトナムが増産候補に挙がっていると言う。このニュースを前提に見ると、バイデン政権が急ぐ新経済圏構想IPEF(インド太平洋経済枠組み)の当面の狙いが脱チャイナにある様に見える。台湾を入れなかったが、台湾は工場受け入れ先ではなく、台湾企業の脱中国が課題となる。当然、米雇用戦略の狙いもあり、ホワイトハウスの試算は300万人雇用増の算盤。日本企業の海外事業では、加盟13ヵ国での事業を伸ばせる企業が優位になる。

西側企業の撤収が続くロシアでは、新たに米スターバックスが23日、完全撤収を発表した。マクドナルドに続き、象徴的インパクト。ウクライナのゼレンスキー大統領はダボス会議で、「石油禁輸、ロシアの全銀行排除、外国企業のロシアからの完全撤退、ロシアIT産業の西側との遮断」を改めて求めた。

中国の配車サービス滴滴グローバルはNY取引所に上場廃止手続きの開始決定を通知した。米ADR(預託証券)市場からの中国企業追放が静かに進行している。中国からは習近平路線によるハイテク企業締め付け策が影響している。脱チャイナ、中国分離などが進むかどうかは今秋の「習主席、3期目5年続投」が大きな分岐点になると想定されるが、中国共産党の強引路線が修正されない限り、趨勢的に加速するものと思われる。

GSのヘッジファンド分析で、「困難な状況に直面し、レバレッジ縮小と成長株からのローテーションを急いでいる」と報告された。分析対象は799ファンド、株式ポジション約306兆円。年初来の運用成績は平均-9%。まだ、売り圧力は残るとしているが、徐々に新しいポートフォリオ構築に向かっているとしている。新しい枠組み作りは、資産再配分を加速すると考えられる。

 

【米株、底値圏探る攻防】

先週前半に目立ったのは、ナスダックの下げだった。特に24日の米株市場は底値圏の波乱攻防。NYダウは朝方の514ドル安から48ドル高に切り返したが、ナスダックは-2.35%、S&Pは-0.81%。経済統計では、商務省発表の4月新築一戸建て住宅販売戸数が年率換算前月比で-16.6%、204月以来の低水準。519日現在で30年物固定住宅ローン金利は5.25%、販売価格中央値は前年同月比19.6%上昇で、需要を圧迫している。

この日ハイテク株の中で、前日に業績下方修正した写真・動画共有アプリ運営のスナップが43.1%暴落し、ハイテク株売りが広がった。アルファベット(グーグル)5%安、メタ(旧フェイスブック)7.6%安など。大型ハイテク株で構成されるナスダック100指数は昨年ピークから30%近く下落している。

もう一つ下げ止まらないのがEV大手テスラ株。イーロン・マスク氏がツイッター買収を表明した44日は1145ドル、24日は一時620.57ドルまで下落した(27日には759ドルまで戻している)。テスラ上海工場の操業も完全には戻っておらず、業績面でも厳しいと見られる。

GSBofA(バンクオブアメリカ)のストラテジストからは「FRBの政策転換(引き締め停止)までに米株は一段安へ」との見方が出された様だ。リセッション(景気後退)入りか、インフレ減速が明確になる必要があるとの見方で、転換は今年後半と予想している。ただ、今回は要因が複雑で、それほど明確な転換点は現れない様にも思える。言わば、なべ底型の底入れパターンもありうる。27日のブルームバーグの記事で、BofAの調査によると25日までの1週間で株式ファンドの資金流入が200憶ドル(25400億円)に達し、過去10週間で最大となり、割安感から買いの動きが広がっているという見方が、先週後半あたりから徐々に強まっている。

開催中のダボス会議で「プーチンと習近平排除」に言及したのは、投資家ジョージ・ソロス氏。「第三次世界大戦の始まりかも知れず、自由な文明を維持する最善の方法は西側諸国がプーチン氏を打ち負かすことだ」。習氏についても「ゼロコロナ失敗など一連の過ち」を強く批判した。案外、想定外の展開を望む市場の気分を投影しているかも知れない。

PAGETOP