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2022年07月18日

【Weekly No.344】高インフレで利上げ観測加速も大波乱に至らず

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  1. 高インフレで利上げ観測加速も大波乱に至らず
  2. 岸田覚醒、原発再稼働など具体策動き始める
  3. バイデン政権は焦っているのか、日米連携強化へ弔問外交
  4. 自民大勝も岸田政策動向見極め

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Weekly 718

【高インフレで利上げ観測加速も大波乱に至らず】

13日、最も注目され市場の焦点だった米6CPI(消費者物価指数)は前年比+9.1%(市場予想+8.8%、5+8.6%)と1981年以来の高い伸びとなった。前月比は+1.3%(5+1.0%)。これを受け、市場では7FOMC2627日開催)での1.0%利上げ観測が確率1/3に上昇、2-10年債の長短金利逆転が拡大(逆イールド、景気後退を示唆していることになる)、ユーロは対ドルパリティー(1ユーロ=1ドル)を一時割り込んだ。

CPI 発表を受けて13日のNYダウも一時460ドル安だったが、終値は208ドル安。ナスダック指数は11000ポイントを下回らず0.15%の小幅安。台湾株高を受けたSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)は+0.75%だった。

珍しくバイデン大統領発言が市場ムードを反映したかも知れない。「インフレ率は受け入れ難いほど高水準だが、最近のガソリン価格下落を考慮すると過去の話だ」と述べた。エネルギー価格はCPI上昇分の約半分を占め、前年比では+41.6%だった。実際は、同日発表のベージュブック(地区連銀経済報告)を投影している可能性がある。「複数の地区が需要減退の兆候が強まっている」と報告。5地区が景気後退リスク増大を巡る懸念を示した。

米ゴールドマン・サックスの調査によると、中小企業経営者の93%が半年以内に景気後退が始まることを懸念。61%は「米国は誤った方向に向かっている」と回答。1年前はコロナ終息期待で「67%が米国は正しい方向に向かっている」と回答していた。

7FOMC1.0%利上げ観測が強まった要因には、13日カナダ中銀が1.0%利上げを実施したこともある。カナダ中銀は2回の0.5%利上げ後、利上げ幅を拡大し、さらなる利上げ姿勢を示した。14日のJPモルガンを皮切りに、米企業決算発表が始まったが、景気減速懸念企業業績悪化懸念との綱引きになる公算。

13日は原油相場が95-96ドル/バレル程度で落ち着いていたことも、市場波乱が限定的だった要因と考えられる。バイデン中東歴訪が始まり、原油価格抑え込み策がどう展開するか注目される。なお、ドイツは81日からロシア産石炭の輸入を完全停止、12月末にはロシア産原油も完全禁輸となる。中国の6月原油輸入は4年ぶりの低水準となった。前年同月比で11%減、貿易統計では港湾回復で輸出全体が+17.9%、輸入は+1.0%で中国経済動向が重石になる公算がある。

なお、台湾株急反発は国家金融安定基金による株式市場介入発表による。売り方の買い戻しが押し上げたと見られるが、市場に安心感が戻るか注目される。

 

【岸田覚醒、原発再稼働など具体策動き始める】

14日夕方の岸田首相記者会見は踏み込んだ内容と受け止められ、岸田覚醒と呼ばれている。官邸内にも反対意見があったと言われる「安倍氏国葬」、参院選後と見られていたが「原発9基再稼働」(老朽火力10基も)を経産相に指示、爆発的感染拡大のコロナ対策でも動じなかった。

岸田首相は5月の日米首脳会談辺りから、外交・安保でアベ路線踏襲姿勢を強めていたが、検討使と揶揄されてきていた。参院選勝利で自信を深めたか、安倍氏暗殺の非常事態に危機感を深めたか、行動変化をもたらしているように見える。英首相に続き、ドラギ伊首相が辞意表明など、欧米政治が揺らいでいるため、政治の安定が日本の強みになる可能性がある。

本流が確りすると支流も動き出す。たまたまかも知れないが、14日は「関西電力とオリックス、和歌山県で大型蓄電設備建設(113Mwh、運用開始は244月予定。変電所内に設置するので、他社でも変電所刷新投資が起こる期待がある)」、また、ロイターが「日英、戦闘機開発計画の統合検討、年内の合意目指す」と報じた。次期戦闘機開発は日米でなく、日英で開発が進められていることは既に周知の事実(例えば、今年1月にIHIとロールス.ロイスが次期戦闘機用エンジン共同開発に乗り出している)だが、18日からのファンボロー国際航空ショーで何らかの発表が行われるかも知れない。日英防衛産業の大きな柱になる。周辺設備投資、技術開発などの活発化が期待される。

ただし、米市場は依然不安定。14日は、モルガン・スタンレー30%減益、JPモルガン28%減益の第2四半期決算で、この日NYダウは一時600ドル安となったが、3万ドルは割り込まず終値は142ドル安、ナスダックは小幅プラスに戻した。銀行決算は投資銀行部門の不振が目立った。

14日発表のPPI(卸売物価指数)は前月比+1.1%(市場予想+0.8%、5+0.9%)、前年同月比+11.3%と高い伸びとなった。ただ、コア指数に頭打ち傾向も見られた。週間新規失業保険申請件数は24.4万件、前週比9000件増。2週連続でジワリ増加している。

FRB高官が相次いで「7月会合で0.75%利上げ支持」を表明、前日のCPIから高まっていた1.0%利上げ観測が後退したことなどが株価持ち直しに効いたと見られる。15日発表の6月小売売上は前月比+1.0%と予想以上に伸びたが、ミシガン大学の7月消費者態度指数で長期の期待インフレが2.8%と前回の3.1%から下げており、昨年7月以来の低い水準となった。このため1.0%利上げ観測の後退もあって15日は6営業日ぶりに大幅反発、NYダウは655ドル高であった。週明けからその持続性に注目が集まる。

 

【バイデン政権は焦っているのか、日米連携強化へ弔問外交】

安倍氏追悼で、かつてない弔問外交が展開されている。その中で、米重要閣僚が相次ぎ来日したのが目立つ。安倍氏と最も交流があった米民主党の代表はオバマ元大統領だが、交流は薄いと見られるブリンケン、イエレン氏が急遽来日、岸田政権との会談を行った。極めて機敏な行動は、日本に何らかの要請、共同歩調を求めて来た可能性が考えられる。英国が次期首相選びに突入しているだけに、頼るのは日本、との印象がある。

710日、CIVIQS(オンライン調査)の世論調査で「バイデン支持率29%」の衝撃的ニュースが出た。支持が不支持を上回るのは2州(ハワイ、バーモント)のみ、黒人は55%支持だが、ヒスパニック36%、白人は24%の支持率。24%は辞任直前のニクソン以来の数字。「米国が間違った方向に進んでいる」との回答は、AP通信で85%、ギャラップで87%、モンマスで88%と極めて高い。2024年の次期大統領候補としては民主党支持者の64%がバイデン氏以外を望む。11月の中間選挙で大苦戦予想が出るのもムベなるかなの情勢。

先週後半は、バイデン大統領の中東歴訪、G20財務相・中銀総裁会議が開催予定されていた。それを睨んで、原油価格抑制、高インフレ歯止め、ロシア制裁強化、新興国債務問題などで、成果を上げる目的でバイデン政権が走り出した印象がある。米国を二分する中絶問題や銃所持問題には、日本の関与はない。ロシアをやっつけた、ガソリン価格を劇的に下げた、米景気・雇用は大丈夫、などの環境を整えたいのだと思われる。

米財務省高官は「ロシア産原油上限価格(プライスキャップ制)がなければ、原油相場は140ドル/バレル前後に急騰する恐れがある」。日米共同声明でロシア制裁強化を謳っており、何等かの合意をした可能性がある。WTI原油相場はこれを意識したか、7%超の急落、北海ブレントも3ヵ月ぶりに100ドル割れ。原油下落はインフレ感を多少冷やしてくれる可能性がある。ただし、来年インフレ率低下では、中間選挙に間に合わない。

共同声明ではスリランカを例に新興国債務問題を取り上げた。イエレン財務長官は中国の非協力を非難している。また、日本の投資家は5月までに過去最長の7か月連続で米国債を売り越している。黒田日銀総裁とも会見し、米金利安定へ日本の協力を求めた可能性が考えられる。米金融市場の安定化も今夏の大きな課題になると見られる。

  

【自民大勝も岸田政策動向見極め】

安倍氏凶弾に倒れるは世界を震撼させた。「アベ・ショック」と言うより、「世界を立ち竦ませた」観がある。安倍氏の主張も合わせて考えると、「安倍さんは日本人に緊張感を残した」と思われる。それを受けての参院選・自民大勝だが、追い風は選挙区で、比例区は1議席減らした。公明党も1議席減で、新興政党に流れた可能性が考えられる。世論の不満の捌け口的流れで、岸田政権は安定多数を得たものの、安定度が高まった訳ではないと思われる。一つの軸であった安倍氏を失ったことで、党内緊張に向かうか、内閣改造や政策動向が注目される。

安倍氏の成果の一つは、米中G2構想(太平洋を米中で二分割する。習近平氏がオバマ大統領との8時間対談で提唱したとされる)を阻止し、インド太平洋戦略を推進したこととされる。先週、米中5時間会談を行ったブリンケン米国務長官が弔問来日した。早ければ今月にもバイデン大統領は米中首脳会談を行う意向を示している。11月の中間選挙苦戦が伝えられるバイデン政権としては、中ロ引き剥がし(ロシア孤立化圧力)、インフレ抑制・景気失速防止を目指したいと見られ、中国に高関税部分緩和など妥協カードを提示する可能性がある。その場合、岸田政権の対応力が問われよう。

株式相場では半導体関連の反騰力が、当面のカギと考えられる。8日の台湾加権指数は+0.89%、韓国KOSPI+0.70%と続伸。8日発表の6月台湾輸出は前年同月比+15.2%、24ヵ月連続増加で過去2番目の高水準。中国向け-4.5%だが、半導体+21.2%、電子部品+19%が牽引した。14日に決算発表した世界最大の半導体メーカである、台湾TSMC46月売上高は36.6%増だったことで、世界的なテクノロジー株売りの反転相場が焦点となろう。

(文責 太田)

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